【吉田酒店の酒蔵探訪記】仁井田本家(福島・郡山市田村)

「にいだしぜんしゅ」 自給自足の蔵を目指して

2020年6月よりお取引させていただいております「仁井田本家」さん。
福島県郡山市田村町で1711年より続く、創業300年以上にもなる酒蔵です。
7月2日に訪問させていただきました。

車で仙台を出発し約2時間。
田んぼ沿いの細い道をナビを頼りに進むと「自然酒」と書かれた大きな樽看板が迎えてくれます。

到着後にまずは、営業部長の内藤さんより、蔵の経営理念、使命、夢、商品のコンセプト・こだわりなどをご説明していただきました。

「日本の田んぼを守る酒蔵になる」を使命に、自給自足の蔵、そして村になることを目標としていまして、その使命感が、土作り、米作り、酒造りの全ての工程で生かされています。
目指す味わいは「自分たちが飲んで美味しいと思う、米の旨みがある日本酒」
薬・化学肥料を一切使わない自然米100%・純米造り100%・天然水100%・自然派酒母100%の
“自然酒”造りを行なっています。

説明を聞きながら、ノンアルコール商品の「あまざけ すぱっしゅ」をいただました。
パイナップルのような甘さと酸味でごくごく飲んでしまいます。ソーダで割ってもおいしそう…。

いざ、蔵の中へ!!

そして、蔵に移動して見学させていただきました。蔵を見学することで、その使命感や夢がより伝わってきます。
蔵に入って最初の説明で、「この蔵で造った日本酒なら安心して飲める」と思ってもらえるよう衛生面にも十分注意しているそうで、蔵全体がとにかく掃除が行き届いていて美しい蔵です。機器や道具の配置も整然としてます。

仕組み蔵「鳳蔵」

仕込み蔵の「鳳蔵」。蔵内の太い梁や床板には柿渋を塗り込んでいるそうで、ピカピカに磨かれて輝いております。見た目にも趣があり、空気間も気持ち良いといいますか、安心といいますか、感動的な雰囲気です。

仁井田本家さんには3つの柱商品があります。そのうちの一つの『しぜんしゅ』ブランドは、蔵に伝わる独自の「汲み出し四段造り」を行っております。
三段仕込みの後に、さらにもう1回蒸米を入れ、甘みを出す仕込み方法を四段仕込みといいます。それを『しぜんしゅ』では、もろみのタンクにそのまま蒸米を入れるのではなく、もろみの一部を小さなタンクに“汲みだして”から、そこに蒸米を入れ、しっかり甘さを出してから大きなタンクに戻すという、とても手間のかかる仕込み方法をしているのです。
特徴的な口当たりと、柔らかな甘みは、この仕込みからきているのですね。

上の階にはこのようなスペースも。
物干し竿が置いてあり、通常は仕込みなどで使用した布やタオルなどを干すスペースなのですが、ステキなピアノも置いてあります。
ピアニストとして活躍していた女将さんが、蔵のイベントで演奏することもあるそうです。

醪タンクが置かれている部屋もピカピカ。

代々受け継がれる「穏」

麹室へ。もちろんピッカピカ。
自然の風を天井に開けた隙間から取り入れて、室内の温度調節を行っているそうです。
ここにも“自然酒”への姿勢が見えます。上の写真奥の青い箱は白麹の製麹装置だそうです。

もう一つの中心銘柄である『穏(おだやか)』は、白麹の酒母で仕込んでいます。代々蔵元の名前(長男)に引き継がれてきた「穏」の文字をとって、現在の十八代蔵元が新しいスタイルのお酒として造られたものです。平成6年から醸造をはじめて、「酒母は白麹・仕込みは黄麹」という珍しい造りをさています。

日本酒の麹は一般的には黄麹を使い、白麹は一般的には焼酎に使われる麹です。白麹は黄麹に比べてクエン酸という酸を多く出す麹として知られています。
この白麹で酒母を造ることで、速醸用の乳酸を添加したり、生酛や山廃をして乳酸菌を取り込んだりしなくても、酒母を酸性にすることができるのです。そこに、黄麹の麹米を仕込み時に使用することで、日本酒らしい味わいに加えて、爽やかな酸味のお酒に仕上ります。

白麹のクエン酸は、主に焼酎造りの麹として利用されてきました。
気候が温暖な九州地方で焼酎を造る際に、腐造を防ぐ役割を果たします。焼酎の場合は、蒸留する際にクエン酸は除去されますので、その風味は焼酎には移りません。ただ、日本酒造りに白麹を用いた場合は、クエン酸が日本酒の成分として残り、通常使われる黄麹では出せない「爽やかな酸味」を生み出します。個人的にはこの酸味が大好きです!

水を守る=里を守る

先祖代々守ってきた自社田近くの「竹の内の井戸水」(硬水)と、自社山から湧き出る「水抜きの湧水」(軟水)という二つの天然水を使っています。
硬水と軟水、それぞれの特徴を生かし、酒質によって使い分けております。
この天然水を使っているため、水を守るために所有するおよそ100haの山の管理も、大切な酒造りの仕事の一つだそうです。

仁井田本家さんの今年の心意気は「また来たい蔵になろう」だそうです。
Facebookからの情報発信や、定期的にイベントも行っており、地元の方や、仁井田本家を愛するお客様との交流を大切にされています。

ブレないビジョンをもち、原料と製法にこだわり、自然酒100%の酒を造りあげていること。
そして酒蔵から、田んぼを守り、循環型の町作りで多くの方々と共に取り組んでいること。
熱い思いと使命感を、訪問させていただいてより感じ取ることができました。これからも、より深いお付き合いしていけたらと思います。

内藤さん、仁井田本家の皆様、貴重な経験をありがとうございました。


仁井田本家

〒963-1151
福島県郡山市田村町金沢字高屋敷139番地
TEL 024-955-2222
FAX 024-955-5151
URL https://1711.jp/