【吉田酒店の酒蔵探訪記】月光川蒸留所(山形県遊佐町/ウイスキー)

月光川蒸留所

本日は、山形県の月光川蒸留所へ見学に行って来ました。 [https://gakkogawa.com/

月光川蒸留所は、日本酒で有名な楯の川酒造(山形県酒田市)さんを親会社に持つ蒸留所です。

日本酒造りで長年培ってきた技術やモノづくりに対する熱い想いをベースにウイスキーづくりが行われておりました。細部にまでこだわる愚直な姿勢は尊敬でしかありません。

月光川蒸留所のウイスキー造りは、楯の川の日本酒と同様、洗練されていて、かつしっかりとボディ感のある味わいを目指しているそうです。

《会社設立が2021年12月、2023年10月よりウイスキー製造が本格的にスタート》

蒸留所の麓を流れる「月光川」が蒸留所名の由来です。

 

いざ蒸留所見学へ

見学の案内をしてくれたのはセールスマネージャーの塚形さん

麦芽の状態からウイスキーが出来上がるまでの製造過程、機械の特徴、ウイスキー造りに対するこだわりを、熱く、こと細かに教えていただきました。

麦芽の粉砕比率について

 

まずは粉砕機
手前に見えている袋には100%イギリス産の大麦麦芽(1トン) 。一日に半分(500㎏)ずつ仕込む。

 

麦芽に交じって細かい砂利が含まれることがあるため、粉砕前に分離装置で分離させます

 

蒸留所にある機械はほとんどが三宅製作所製(https://www.miyake-seisakusyo.co.jp/)で、粉砕機のみドイツ製。

原料はイギリス産の大麦麦芽のみ。1日で仕込める麦芽の量は500㎏(日本の蒸留所の中でもかなり少ない方だそうです)。

いずれは地元産の麦芽も使っていきたいとのことです。

 

続いて発酵槽

発酵期間は4日間。一部エール酵母も使用されています。

奥から発酵一日目、2日目、3日目と移していきます
発酵1日目

 

次に蒸留器(ポットスチル)2基
右が初留器(くびれがあるランタン型)、左が再留器(ストレート型で先端が少し下がっている)
日本一のくびれ(初留器)

 

写真右に見えるのは初留器。ランタン型と呼ばれる形で真ん中がくびれているタイプのもの。日本に存在するポットスチルの中で最もくびれており、「とにかくクリーンな酒質を目指したい」という想いを汲んで、三宅製作所が特別に製作してくれたものだそうです。

2基のうちの左はストレート型と呼ばれる形の再留器。ポットスチルの先端が少し下がっています。先端を下げることでボディ感のある原酒となります。

 

蒸留された原酒は、製造スタッフ全員で所定のタイミングを見計らって官能テストを1分毎に行い、全員が納得した最適なタイミングで樽詰めの工程へと移ります。

 

最後に貯蔵庫です

中に入った瞬間、あっと目を引く造りになっておりました。

下段の方はプライベートカスクで昨年・一昨年と100樽ずつ募集し、全て完売

 

一樽一樽ごとに貯蔵できる木組みは、酒蔵をルーツとする和のテイストが取り入れられています。一樽ごとにパレットに載せられており、原酒の状態をチェックするために取り出すのに効率的だそうです。最大2,000樽を貯蔵できるスペースになっており、現在は800樽ほどが貯蔵されていました。

また、床には水路が設置されており、温度・湿度を年中出来るだけ一定にするための工夫が施されていました。

床に水路を設置し、年中水を流している

 

そして、月光川蒸留所の立地は日本海のすぐそばでもあることから、海風をより多く取り込むための換気設備にもこだわっています。この広い貯蔵庫内の空気がたった5分で全て入れ替わるよう設計されているそうです。

海風が味わいや香りにどう影響していくのか楽しみですね。

大きな換気扇で外の空気を取り込む

 

樽は半分以上がバーボン樽、そのほかシェリー樽・ミズナラ樽・ワイン樽を使用されています。樽は全て認証されたもので、一樽一樽ごとに認証タグが貼られています。

全ての工程を教示いただいたあと、試飲ブースへ。試飲ブースも和のテイストで雰囲気が最高でした。

 

試飲

今回4種類を試飲させていただきました。

左からシェリー樽(1年6ヶ月)、ミズナラ樽(1年7ヶ月)、ニューポット、バーボン樽(1年1ヶ月)

 

まずはニューポットから。洗練されていながらも重心がしっかりしていることがはっきりとわかります。フルーティさ、甘味が感じられ、これが樽熟成によりどのような仕上がりになるのか、ワクワクが止まりません。

次にバーボン樽1年1ヶ月熟成。香りを嗅いだ瞬間、チョコやキャラメルのような甘い香りに包まれます。実際に舌に当てるとしっかりとした甘みを感じ、元々の甘くフルーティーな原酒にバーボン樽がとてもマッチする味わいでした。

そしてミズナラ樽。複雑でオリエンタルな香りがします。1年7ヶ月ととても短い熟成期間ながら、しっかりとミズナラ樽の良さが全面に出ており、すでに商品化しても良いのではないかと思えるほどの完成度でした。

最後にシェリー樽。こちらも1年6ヶ月ほどの熟成期間でしたが、シェリー樽特有のフルーティーさが良く出ていました。何年経てば理想の味わいに近づいていくのか、今から楽しみで仕方ありません。

 

ニューボーンのリリースが2026年3月、シングルモルト3年のリリースが2027年3月ということで、まだこれからの蒸留所だと思いますが、今後ファンが増えていくことは間違いないですね。

現在は試験的にピート麦芽を仕込み中とのことで、ブレンドによってどのような香り・味わいに進化していくのか楽しみです!

酒×ストーリー(人の想い)を届ける業務用酒販店として、今後も造り手の想いをより深く理解し、広める活動をしていきたいと強く感じる一日となりました。

塚形さん、お忙しい中大変貴重なお時間ありがとうございました!

 

2025年7月