【吉田酒店の酒蔵探訪記】 寒梅酒造 (宮城県大崎市古川)

こころに春をよぶお酒 『宮寒梅』

2月12日、『宮寒梅』醸造元の寒梅酒造さんに伺ってまいりました。
蔵のある大崎市古川は、宮城県有数の米どころとしても有名で、蔵の創業時の1918年にはすでに、この周辺はお米がおいしい地域として知られていました。
現在は、自社田と契約農家さんが作る宮城県産米だけを使用して酒造りをしています。
蔵の周りを囲む自社田では、美山錦・愛国・ひよりなどの酒米を栽培しており、酒造りも米作りも行う家族経営の酒蔵です。

到着後は蔵の代表であり、醸造責任者の岩崎健弥さんより話を伺いました。

健弥さんにとって寒梅酒造は、蔵元4代目の奥様である真奈さんの実家にあたります。健弥さんが蔵に入ったのは10年ほど前からですが、その当時は、自分たちの造った酒を飲んでも「あまり好きになれなかった」というのが正直な感想だったそうです。そこをスタート地点とし、危機感を持ったお二人をはじめ、蔵人さんたちと一丸になり徐々にお酒の品質改良を進めます。

最も大切にしているのは、「より丁寧で洗練された仕事」「常にブラッシュアップさせる」こと。フレッシュでジューシーな酒質の、『こころに春をよぶお酒』をコンセプトとした香り高いお酒を醸し続けています。

最初の一杯で「うまい」と言ってもらえる酒造り

醸造所内を案内していただきました。

施設の入口の前には冷蔵の米蔵があります。
精米所が休み間でも低温で酒米の管理ができるのです。酒米造りから一貫して取り組んでいることもあり、単に“原料米”という訳ではない愛情を感じます。

寒梅酒造さんのルーツは米作りにあります。最近は、酒蔵が原料米から作ることが多くはなってきましたが、寒梅酒造さんにとっては創業時から『当たり前にやっている』こと。
こだわりはもちろんありますが、特に難しく感じることや違和感はないそうです。

2011年の震災後に全壊指定を受けた蔵を建て直し、その翌年には新しい蔵が完成します。
それと同時に普通酒の製造をストップし全量純米化、そして特約店制度を設けて流通経路も変更しました。より良い品質のお酒を造れる環境にしようと様々な設備を加えていますが、一番の大きな変化は建物を完全空調化し『四季醸造蔵』に立て替えたことだそうです。先ほどの米蔵もその一つ、冷蔵設備を整えお酒の管理をしっかりさせることで、酒質の向上を図ります。このような一つ一つの細やかさが酒の品質にも影響し、そこから品評会などでも受賞するお酒を生み出していきます。

多くの酒蔵では秋に収穫したお米を使い、冬から春先にかけてお酒を仕込みます。しかし、寒梅酒造さんでは、空調設備の整った蔵で年間を通して酒造りを行えるのです。これによって、様々な銘柄を高品質で小規模生産するこができるようになりました。

釜場をスタートとし、麹室、酒母室が隣接しています。少人数でも効率よく作業できる動線です。

こちらは19%まで磨かれた美山錦。

このお米から『純米大吟醸 吟髄』が仕込まれます。宮寒梅の最高峰、蔵元随一の特別酒です。

麹室も麹蓋もしっかりと温度管理されています。
麹は冬に造り溜めておき、冷凍保存しているそうです。

「ジューシーな香りと米の旨味がバランスよく広がる味わいを狙っています」と話しておりました。宮城県の地酒は“食事と一緒に”というイメージが強い、穏やかな香りの酒が中心です。しかし、寒梅酒造さんの『宮寒梅』はその地酒とは対照的な存在で、“香り系”と呼ばれる吟醸香を特徴とするお酒。『最初の1杯目でうまいと言わせる酒』を心掛け、香りから最初の感動を与える酒造りを目指しているそうです。椿の花から採取された酵母の香りは、まさにジューシーでフルーティーでした。

「酵母が注目されがちですが、種モヤシも大事なんですよ」
寒梅酒造さんが使っている種モヤシは、そのお酒を香り高くし、グルコース濃度を上昇させてくれるそうです。

日本酒は一般的に日本酒度・アルコール度・酸度・アミノ酸度の4つの数値を見ますが、それらに加えて最近注目されているのが『グルコース濃度』です。醪の中の糖分(酵母の餌の量)をグルコース濃度と表します。醪の中の糖分が多過ぎると、それに押し潰されて酵母は死んでしまいます。反対に少ないと、アルコール度数が低く、線の細いお酒になります。

理想とする酒質や香りを出すためには、酵母が健全に働いてくれることが重要です。そして、酵母が健全に働くためにはバランスの良い糖度が必要なのです。
今まで『香り=酵母』のイメージが強かったのですが、その前段階の種モヤシの選択も重要なのだと、初めて知りました。

搾った後はすぐに瓶貯蔵して火入れ。̠̠-3度から-7度の低温の冷蔵庫で保管されます。
香り高く、フレッシュでジューシーな酒質はこのようにして造られます。


寒梅酒造さんの丁寧で洗練されたお酒造りの背景には、お米作りがあり、一つ一つの工程で細かい選択をした結果がある、ということを今回の訪問で感じました。常にブラッシュアップを続け、独創的で高品質な銘柄が生まれる、これからの宮寒梅もますます楽しみです。

健弥さん、寒梅酒造のみなさま、お忙しい中ご対応頂きありがとうございました。


合名会社寒梅酒造

〒989-6216
宮城県大崎市古川柏崎字境田15

TEL:022-926-2037
FAX:022-926-2263

miyakanbai.com